10冊読書

【10冊読書】『~の世界史』って本を10冊読んだので感想書きます!

はじめに

10冊読書プロジェクト、第2回。テーマは「~の世界史」です。

この世には世界史を語った本は星の数ほどありますが、その中で今回注目したのはタイトルです。

「~の世界史」というタイトルの本縛りで10冊読み、歴史ウンチクを貯めこもうというのが今回のたくらみ。

果たしてこんなことが役に立つのか、立たないのか!?

ただね、役に立つことしかやらなくなったら人間おしまいだと思いますよ僕は。

役に立たないことこそが人間を人間たらしめ、人生と精神を豊かにするのです。

『~の世界史』本でいうと有名どころは

川北稔教授の『砂糖の世界史』(岩波ジュニア文庫)でしょうか。

この場合は砂糖という特定のモノについて書いた世界史。(これは僕はすでに以前読んだので今回の10冊には入ってません。ただめっちゃおすすめではあります。)

その他今回は、地域・象徴・研究・経済分野など、様々な切り口から世界史を見た本を集めました。

メンツはこんな感じ↓

世界史を使った受験生で、大学に入っても引き続き世界史を深く知っていきたいと思う方なんかには、もってこいのリストになったと思います

では1冊ずつ紹介します!

「~の世界史」本、好評の10冊はこれ!

①珈琲の世界史(旦部幸博)

一発目は「珈琲」。

ベタからのスタートです。世界中で人気かつ身近なこの飲み物は、世界商品の例にもれず、非常に搾取的な構造の上に成り立ってきた商品でもあります。

人類のコーヒーとの出会いから、商品化、イスラム圏での商取引、西洋への広まり、一般化と大衆のコーヒー文化の形成、日本での普及、そしてフェアトレードコーヒーやスターバックスなどチェーン店舗の台頭した現代まで。

著者がそもそも理系人間ということもあり、コーヒーという種の繁栄や遺伝についても書いてあります。また煎り方、挽き方、淹れ方などを巡る発明や流行にも言及。

これは正直歴史好きというより、コーヒー好きの君に勧めたい1冊。

ただ歴史がまあまあ深く突っ込んだ内容になるので、地理と歴史の基本的な知識がない人には苦痛な章もあるかも。エチオピアとかイエメンの詳しい歴史は、歴史好きの僕でも、いや知らんがなという感じでしたね。

②「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム(茂木誠)

2冊目、「戦争と平和」

トルストイとは関係ありません。

リアリズムの立場から”史実”に基づき、人気予備校講師が書いた一冊。400ページを超える分厚さに、学校で習うような史実の裏に何があったかまで割と深堀りした本ですので、読みやすい文体ではありますが中々骨のある本だと思います。

ただ歴史マニアからしたらかなりさらっとしたレベルかもですね。

先史時代~古代ギリシア~中世の宗教戦争~ウェストファリア体制と主権国家成立~国際法の適用~ウィーン体制~明治以降の日本~大戦期から冷戦期の国際秩序

と一見世界史をさらっているようですが、この本のメインは「第二次世界大戦における日本の敗戦に関して、実際に起こっていたことは何か」を描きだすことに尽きます。

そこまでの話は、この本の主眼をまとめるための布石。

自虐史観に陥りがちな日本の大戦期以降の歴史教育に一石を投じようということで

先の敗戦は、列強の思惑と共産主義勢力の隠密活動、日本の軍政部の失態が招いた惨劇ということを立証するための本であり、「軍部の暴走で起きた」という単純な論調の妥当性のなさを看破しております。

多少の反共的な視点や、日本人としての被害者意識を感じる説明などもありますが、読んで損することはないと思います。きっとこの本のいう”史実”も、論をもとめるために作為的な抽出がされた嫌いがあると思います。歴史書一般に言えますが、入り込みすぎずに冷静に一意見としてみる姿勢が大切ですね。

③一杯の紅茶の世界史(磯淵猛)

「~の世界史」と結ばれたタイトルではありますが、これは歴史の本というより紅茶の本でした。

紅茶史です。

それも研究に基づく紅茶史というよりは、体験やフィールドワークに基づく紅茶史。事実やデータは、先達の紅茶史本からの引用がほとんどですが

著者の紅茶紀行文のような章が結構多くて面白いです。

イギリスのロンドンやアイルランド、インド、スリランカのキャンディなど、僕も行ったことがある地域の紅茶文化が著者の体験に基づいて書かれていて、僕も自分の記憶の中の紅茶の湯気や香りが蘇ってくるようでした。

紅茶の教養・伝記・紀行文・人類学・歴史などをマイルドに練り混ぜた読みやすい一冊。紅茶のようにすっきりとした読後感です。

やれやれ、ついつい紅茶を飲みながら読んでしまいます。

運よくうちにはリプトンティーバッグに加え、イラン茶とタイ茶もあったので乙でした。

④会計の世界史ーイタリア、イギリス、アメリカー500年の物語(田中靖浩)

中世末期、世界の先進国家だったイタリアで花開いた商業文化。

それに伴う金融システムや会計の発達。オランダ、イギリス、アメリカと世界の覇権が動くたびに時代の需要にしたがって発展しながら、金融や会計の中心も変遷していきました。

商人が税金などのためにする「自分のための簿記・帳簿」が、株主をはじめとするステークホルダーへの説明責任として「他人のための会計」に様変わりし、さらに時代が進み証券取引所が発達し株式会社の規模が拡大するに従い、バックオフィス業務なども増加。そんななか利益を出し続けるために未来まで踏まえた「自分のための財務管理」に発展した。

覇権国と会計の発展という2軸は、歴史上でも実際にリンクしています。しかしこの本では、そこに「文化と発明」という第3の軸を組み込もうという試みがなされています。

具合的には

「自分のための簿記・帳簿の発展」「イタリア、オランダ」の章では「絵画」

「他人のための会計」「イギリス」の章では「交通の発明」

「自分のための財務管理」「アメリカ」の章では「音楽」

会計史の偉人だけではなく、絵画、発明、音楽の偉人のエピソードもふんだんです。

正直そのリンク無理ないか?と思う部分もありますが、フランクに書かれている本なのでご愛敬。作者もいっているとおり、本格的な歴史検証を期待して手に取る本ではありませんので、ウンチク程度に捉えながらも、会計の成り立ちに触れてみたいよって方にはお勧め。

分厚いけど文字が大きいので文量は少なめ。とても読みやすいです

⑤とてつもない失敗の世界史(トム・フィリップ)

これはめっちゃおすすめです。

割と新刊。「失敗」という括り限定で、歴史上の出来事を紹介していくスタイル。一応古代から現代へ、時系列に沿ってはいますが、世界史がをそれなりに頭に入っているほうが面白い本だとは思います。

著者はコメディ作家でもあるので翻訳本ではあるものの、文体やリズム、ふざけ方がとても面白いです。普通に笑える本です。

ただその裏には、著者の並々ならぬ正義感が溢れています。きっと人間のダメさ、変わらないさ、愚かさを痛感し、冷笑し、ネタにしつつも、本心では人間を信じ、失敗から学び、成長していけると言いたいのだと思います。

経済不況以降の自国主義とポピュリズムの台頭や、環境問題などに関する失敗例の後には、著者がかなりの危機感をもって現代を見ていると思わせる文章が続きます。

このような大切なことを伝えるには「読ませる」必要がある。そのためにユーモアを使うというのは最も芸術的な笑いの昇華だと思います。どこぞのチャップリンのような。

イギリスだからかブラックジョーク多め。事故などで亡くなった方まで「人類の失敗」の一部として並べ立ててしまうのはどうなの?とはちょっとおもいました。

ただ今はニュースのファクトチェックの慈善団体などをやっている著者なので、ジョーク本とはいえ、歴史として精確さにはこだわっているようです。

⑥天文の世界史(廣瀬匠)

この本もめちゃくちゃ面白い。

これは世界通史が頭に入っていない人でも楽しく読めると思います。

ただ天文関連の事項を時系列で追うかと思いきや、目次を見てみるなんと「天体別」。

人類から見た太陽史・月史から始まり、暦の話なども交えつつ、惑星史、彗星史、銀河史など。これらは歴史をあくまで「人間からみた視点」で紹介されているのが特色です。

「銀河はどう生まれたのか?」ではなく、「銀河の誕生を巡って誰がどんな研究をして、どう文化に影響を及ぼしたか?」が書かれています。

星々の宇宙での活動が、人間の暦、占い、宗教、文学、思想、戦争、政治など、本当に大きなかかわりを持っていたことがわかります。

歴史の先生が授業の小話としてストックしておくべきような話がたくさん。授業が単調な先生たち、お勧めですよ。

⑦金融の世界史 バブルと戦争と株式市場(板谷敏彦)

タイトルに恥じない詳しすぎるほどの内容です。これは高校レベルの歴史は大まかに知ってないと難しい本かもしれません。

前半はどっぷり歴史の話も多くとても知的好奇心が刺激される面白い内容。

ただ後半がむずい!!むず過ぎる!!

世界経済や金融の知識も相当求められる内容に変わってきます。

文章自体は平易。細かいところは専門用語も多く、時代背景なども知らないときつい部分がありました。

しかし、金融という仕組み自体がどう生まれて、どう変化し、今ではどんな役割の中でどう捉えられているのかを大まかに知りたい人にもお勧めできる本だと思います。本質的です

⑧「中東」の世界史 西洋の衝撃から戦争・テロの時代まで

なかなか骨太な内容ではありますが

中東滞在経験も長い本格研究者が一般向けに書いた本ということで

内容はとんでもなく濃いです!

中東の歴史や情勢自体が複雑で難しいので書いてあることも複雑で難しいのですが、文章が平易で、とても読みやすく配慮してくれています。

①オスマン帝国期②英仏支配期③米ソ冷戦期④ポスト冷戦期

と近現代を4つの時代区分に分け、著名な歴史家の視点や日本の世界史教科書を援用しつつ描き出す歴史は実に鮮やか。歴史の鼓動を感じる筆流です。

ソ連崩壊によって反共というイデオロギーが失われた結果、 冷戦期のアメリカのイスラームに対するダブルスタンダードが、イスラームの過激思想だけを後に残したという、イラン革命やソ連のアフガン侵攻からの歴史を9.11テロやISの暴走を結びつける論証は芸術的。

世界の一体化がますます進む中、ヨーロッパ諸国ではイスラモフォビア(イスラム嫌悪)が広まりつつあります。今こそ改めてその歴史に目を向けて、理解を深めるべきではないでしょうか。

湾岸戦争に派兵しなかったことで国際的な批判を浴びた日本は、イラク戦争ではアメリカ軍に銃後の援助をしました。石油の価格はイラン情勢にも左右されるでしょう。

中東の歴史や出来事は、今の私たちにとって、遠い国の無関係なことではないのです。

⑨チョコレートの世界史(武田尚子)

チョコレート史です

チョコレートから見た世界史でもなく、世界史からみたチョコレートでもない、純然たるチョコレート史。

とはいえしっかりと読むには割と世界史的教養が求められる内容でもあります。

身近なお菓子の歴史ですので、世界史受験生が受験後の春休みに読んでみるのにちょうどよいかも。

どうしても砂糖やお茶やカカオという物産は植民地主義の歴史と絡めるのが定番になってしまいますが、この本はそれ以降の19-20世紀の記述が多いです。

特にチョコレート工場での工夫から現代風の給与体系や福利厚生が生まれていく様は興味深い。

お馴染みのキットカットに関しては誕生から定着までじっくり歴史を追います。

「世界史」を期待する肩透かしですが、チョコレート史としては面白いです。

⑩図説 国旗の世界史(辻原康夫)

うーん、正直これは世界史本としては微妙ですかね・・・。

そもそも対象としている読者が、歴史好きではなく旗好きです。

歴史学というよりも、紋章学という単語がたくさん出てくるもの。

国旗から見る世界史という観点ではなく、国旗を理解するうえで関係にある歴史のことは書くよ、というスタンスなので、ちょっと「国旗の世界史」というタイトルはミスリード・・・

目次も

「色彩による分類」「形による分類」「象徴による分類」ですし。

旗が好きな人は是非読んでください。

汎スラブ色、汎イスラム色、汎スラブ色、汎アフリカ色など、文化圏や民族圏ごとに緩い統一性があるのは面白いですし

高校レベルの世界史の教員の方などは、こういう話を織り交ぜながら授業ができると素晴らしいと思います。

生徒は、自分が知っていることと授業内容が結びつくときに面白いと感じるものなので。

オススメの3冊!

第1位 「中東」の世界史

最優秀本はこちらです。

著者が、長期中東滞在経験もある歴史学者ということもあり、他の書籍と比べて圧倒的に内容が本格的です。難しい中東問題に、研究者の知識をまじえつつも一般の読者にもわかりやすい平易な説明を与えてくれる良書です。

世界史の知識はある程度あるが、さらにもう一歩踏み込んだ理解がしないという方はまず手に取るべきです。

宗教・政治・経済・軍事・植民地支配・民族・領土などの問題が入り乱れる、現代史の鍵である中東を理解したい方には本当にオススメ。

ただ、骨太な内容ではあるので、世界史の基本知識が入っていない人や普段本をあまり読まない人が読破するには骨が折れるかも知れません。

第2位 とてつもない失敗の世界史

まずテーマが面白いですよね。イギリスの方が書いた本ですが、翻訳本によくある読みにくさをほとんど感じませんので、訳した方がとても上手なんだと思います。

戦争・疫病・貧困など、生物が向き合い続けてきた根本問題の多くをほとんど解決しつつある人類ですが、その過程に失敗は多く、きっと今度もそれは続くでしょう。

己を過信しすぎずに、今までの失敗のパターンを知ったうえで現代を生きる姿勢は、今後も求められいくものだと思います。

ハンス・ロスリング著のベストセラー『ファクトフルネス』と合わせて読みと楽しい。

第3位 天文の世界史

今回読んだ本では、最も「へえ~!」となる回数が多かったのがこちら

茶やコーヒー、チョコレートなどの物産史だと、どうしても話の舞台が限られてしまいます。

茶なら中国・インド・イギリス。コーヒーならアフリカ・アラビア・ヨーロッバ。チョコレートなら新大陸とヨーロッパ。

さらに時代も限定されますから、実際はとても「世界史」と括れるほどの話にはし難い感じに収まってしまう。

そんな中この『天文の世界史』の守備範囲は古今東西、まさしく「世界史」。

天界に馳せる想いや、季節と時間を読むことの必須性が、人類普遍のものであるということをあらためて認識させられました。

カレンダーや干支など、僕たちに身近な話題が多いのも楽しく、

天体別に章分けされることで、話題があちらこちらに飛びながらも全体がひとつの歴史として、天球を埋めるように描かれていく様は、人類の天文史を追体験しているようで

つい最後まで一気読みしてしまいました。

10冊読んでみて

ちょっとだけ生活が豊かになった・・・かも!?

歴史を学ぶ一番の醍醐味ですよね。

今回10個のテーマから世界史を掘ったおかげで、日常で巡らす想いは多少豊かになった気がします。

だって「茶」「ココア」を飲めばその歴史や文化、産地のことを想像できるんですよ!?

お金を使わない日はありません。上に書いた飲みものを買うときに僕たちの経済活動を作り上げてきた「金融」の歴史を夢想しても良いわけです。さらにそこから「会計」の発達のことも考えられる。

それでお金を使いすぎてしまったなと思っても、贅沢三昧で「失敗」を重ねた為政者のことを思い出して反省すれば良い。

そういえばオスマン帝国のひどいスルタンたちは「コーヒー」禁止令まで出したんだっけ・・・。

そのコーヒー文化が栄えたアラブや産地のアフリカでは戦争が起きていて、「中東」の世界史を知っていればそのニュースも理解できるし、「国旗」の世界史を知っていれば、ゲリラ部隊が掲げる旗に込められた意志を読み取ることもできる。

じゃあ日本の国旗の意味はなんだろう。旗が象徴する国民主義、そのナショナリズムから起きた先の戦争はなんだったんだろう。「戦争と平和」はどうして繰り返されるんだろう。

そんなことを考えて見上げる「星空」は、その解釈や研究をしたり、その他の争いや文化的活動をしている僕たちの上に 太古の昔からほとんど変わらない姿で広がっているのです。

ね、なんだかちょっとエモくないですか??

教員の皆さんは是非この企画をやってください

僕の尊敬する先生は、「面白い、生徒をひきつける授業をするにはどうしたら良いですか」という質問に対して

「知識です。圧倒的な知識をまずは身に着けてください」

と答えました。たった10冊ですが、読んでみた結果その言葉の正しさを痛感しました。

僕が近くの人に歴史を話して聞かせるときに、10冊読んだ後のほうが圧倒的に話に幅と奥行きが出ました。

もちろん100冊読んだらさらに進化するのでしょう。

はっきり言ってしまうと、

学校の先生方みなさん、

あなたたちの授業はつまらなすぎます。

ろくに勉強もせずに働きだした1年目に付け焼刃で作った授業を毎年繰り返しているだけなのが透けて見えるんです。生徒でもそのくらいわかります。

10教えるには100知らないといけなんです。

もちろん授業構成や話術などは、慣れで上達するのでしょう。

しかし大切なのは内容です!そして引き込まれる内容を作るのはあなたたちの知識です。

年号と流れを覚えるだけならば教科書と参考書だけで十分。授業なんか時間の無駄です。

実際に僕が高校で受けた世界史の授業は時間の無駄でした。

生徒が歴史を面白いと思うような授業をするためには、教科書には書いていないレベルの知識の引き出しから、縦横無尽に歴史の余談を繰り出す必要があるのです。

それによって生徒の印象に残るどころが、本質的な歴史の理解につながるのです。

学年にひとりくらいはいる、とても面白い授業をする先生は、そういう努力を怠っていないんだと思います。

ABOUT ME
ささ
25歳。 副業で家庭教師をやっているので教材代わりのまとめや、世界50か国以上旅をしてきて感じたこと・伝えるべきだと思ったこと、ただの持論(空論)、本や映画や音楽の感想記録、自作の詩や小説の公開など。 言葉は無力で強力であることを常に痛感し、それでも言葉を吐いて生きている。 ときどき記事を読んでTwitterから連絡をくれる方がいることをとても嬉しく思っています。何かあればお気軽に。