歌詞分析

【撞着表現の真髄】日食なつこ『大停電』の歌詞が凄すぎるので語る

日食なつこの『大停電』の歌詞について語ります。
あまりに良いのでググってみたけど誰もその良さを語っていないので
自分で語ることにしました。

知り合いが教えてくれた
日食なつこというアーティストにドマハリしています。

まだ彼女を知ってひと月も経っていない段階でこの記事をかいているので
ファンというほど詳しくもないし
聴きこめてもいないのですが

日食なつこの歌詞の力にはトリハダが立ちます…

通勤中に日食なつこの『大停電』を聞いていた
あまりの威力に震撼し、思わず仕事にいくのを辞めて河原でしみじみしようと思ったくらいです。

というか実際数分立ち止まりました(おい)

その衝撃をひとことで表すなら

今までにこれほど鮮やかな撞着表現は見たことがない

です。

『大停電』歌詞の概要

歌詞の全文は記載する怒られるので、どっかのサイトで確認してください。(雑か)

この曲の主人公は(おそらく日食なつこ本人だけど)、みんな思考せずに受け入れている「明白に決められた規律や美しく表現されたスローガン」に対する疑問を抱いています。

規律は破るためにあるって 叫んで白い目で笑われた

日食なつこ『大停電』

美しいスローガンの裏に なんだって隠せたんだ

日食なつこ『大停電』

僕たちはこういう表面的なルールや命題を
その本質を真剣に考える機会を与えられないままに
ひたすら刷り込まれます。

「子ども」という枠組みの中で扱われるがゆえに
汚いものや都合の悪い事実が僕たちに告げられることはありません。

教えられることは何故がすべて「正しい」とされていることばかり。

なのに、それが何故正しいのか
何故間違いとされることを教えてはいけないのか
思考のために必要な、「疑う」という姿勢を封殺されるのは何故なのか。

そんな疑問に答えられる人はいないのです。

日食なつこはこんな風に歌っています。

不潔な知識をはねのける 潔癖症がちな学び舎で
活字をすする僕たちは 典型的な温室育ち

日食なつこ『大停電』

チャイムが鳴ればすぐに終わる 僕らがいかにちっぽけでも
考えなくても生きてこれた 贅沢のツケを払え

日食なつこ『大停電』


「考えること」や「真実と向き合うこと」から守られた僕たちにがしてきたのは、「誰かの意見を自分の意見だと信じること」や「経験に基づかない表面的な知識を集めること」です。

そのような本質伴わない教育も
「心身健やか」とか「文武両道」とかいう聞こえの良いスローガンでごまかされているのです。

こんな疑問や不和を抱えて生きている主人公が
その疑問に確信を持つ事件として描かれ
この歌詞の軸、そしてタイトルにもなっているのが

『大停電』です。

雷鳴 なればすぐにわかる 僕らがいかにちっぽけか
真っ暗闇でただのひとつの 知識も使えぬ僕がいた

日食なつこ『大停電』

この曲には「学び舎」「チャイム」など
学校を意識させる言葉が使われています。

しかし大停電が起きたのは夜です。
そしてみんなを暗闇が包むシーンが浮かびます。

怯える生徒の声、叫ぶ教員、テンションがあがりふざけるお調子者。
教室はカオスな状態になります。

黒板の上にいつも掲げられているスローガンも見えなくなり
「生徒ー教員」という構図や、スクールカーストの枠組みも半ば溶けて混ざり合ったような感覚になる。

そして何故か夜に教室にみんなが集まっているという説明のない異様さ。そんななか起きた大停電。
非日常を覆うさらなる非日常。

その空気の中で、雷鳴がひときわ大きく響く。
僕たちが教わってきた表面的にキラキラしたような、正しく聞こえるような知識やスローガンは、教室の混沌の中で消え失せる。

頭上で雷鳴が本当の光を放つ。
そのたびに真っ暗な教室が一瞬だけ昼間のように明るくなる。

このときを振り返る主人公の言葉が
この曲の核になるフレーズです。

大停電の夜に何もかもバレてしまったんだ

大停電のよるにこのままじゃダメだと知ったんだ

日食なつこ『大停電』

暗闇の中で、暴かれた僕たち軽薄さ。

明るい中でわかっているように振る舞う嘘と

暗闇の中で何も知らないことが暴かれる真。

僕たちが抱える矛盾が鮮やかな対比によって描かれます。

この曲は最初と最後にまったく同じフレーズを使っています。

規律は破るためにあるって 叫んで白い目で笑われた
歴史の異端者の言葉は あながち間違っちゃいなかった

日食なつこ『大停電』

この歴史の異端者が誰のことを指すのかはわかりませんが
一般的に歴史を動かすような突き抜けた存在ということにしておきましょうか。

冒頭から日常的に教え込まれることに疑問を感じている主人公は
こんな規律やスローガンなんて破るためにあるんだと思いたかったのかもしれません。

しかしそんなふうに物事に真剣に向き合って必死で考えている人があげた叫びを、何も考えずに周囲に迎合している衆はあざ笑います。

さも自分のほうが賢いかのように。

しかし大停電を通して
主人公の疑問は確信に変わりました。

もはやすべてが暴かれた。
すべてはニセモノで、このままでは自分のニセモノになってしまう。

その確信の抱いて最後に再び繰り返されるフレーズは
どこか冒頭よりも力強く響きます。

こんなにニセモノを作りあげる規律など、
破ってしまって構わないんだ。
規律は規律を守るために作られたわけじゃない。
そのさきにある本当の目的を、僕は見るよ、と。

それが周りに白い目で笑われることになろうと
いっこうに構わないわけです。

歴史を動かしてきた偉大な人々は
皆そうやって生きてきたのだから。

歌詞を支える鮮やかな撞着表現

撞着表現というのは

相反する2つの言葉を同じ文脈に入れ込むこと

です。これにより独特の情感を引きおこす作用を持ちます。

詳しくはこちらの記事にまとめてあります。

この歌詞では
「大停電の夜」という暗闇をあらわす表現と
「バレてしまった」という白日の下にさらされるような明るい表現が
巧みに組み合わされています。

普段から明示される規律やスローガンや活字の知識で
みんな何かを分かった気分になっています。

しかしそれは本質的には
何の理解にもなっていないということが明らかになります。

そして暴かれるきっかけが大停電の暗闇なんです。
「明らか」になる のにです。

明るくなって何かが暴かれるという
一般的な文のつながりを
あえて暗闇で何かが暴かれると形にフリップして
強烈な印象を植え付ける歌詞構造になっています。

鮮やかすぎます・・・!

単語の組み合わせレベルの撞着語法はありふれていますが
それを1つの曲の核となる構成に組み込んで
効果を損なうことなく
それでいて自然に落とし込む技術はなかなか見ません。

本当にすごいです。

まとめ

日食なつこの『大停電』について語りました。

歌詞の解釈は個人の自由に楽しむものですから
何が正しいというものはありません。

ただただ僕の感動を伝えたいがための記事でした。

日食なつこ、本当にいいからもっと広まらないかなあ。
イメージ的に大衆ウケするのかわからないけど
これだけすごい作品を作る人なんだから
そのうちさらに注目は浴びるようになるでしょう。

では、読んでくれてありがとうございました。

ABOUT ME
ささ
25歳。 副業で家庭教師をやっているので教材代わりのまとめや、世界50か国以上旅をしてきて感じたこと・伝えるべきだと思ったこと、ただの持論(空論)、本や映画や音楽の感想記録、自作の詩や小説の公開など。 言葉は無力で強力であることを常に痛感し、それでも言葉を吐いて生きている。 ときどき記事を読んでTwitterから連絡をくれる方がいることをとても嬉しく思っています。何かあればお気軽に。