1フレーズでシビレさせてくるボブ・ディランの歌詞を載せていくだけの記事です。
ついでに愛でます。
Contents
『Mr. Tambourine Man』
Let me forget about today until tomorrow
『Mr. Tambourine Man』 – Bob Dylan
「今日のことは明日になるまで忘れさせてくれ」
最近になって友達から「tambourine man」にはアメリカの俗語で「麻薬の売人」という意味があると教えてもらいました。
なるほど・・・、
この曲を包む、退廃的なのにどこか振り切ってポジティブにさえ見える哀愁のようなもの。
美しき諦めのような感じ。
麻薬に絡めて読むとさらにイメージが湧きやすいような気もする。
なんか上の1行にいろいろ込められているよな。
どうせ考えなきゃいけない、向き合わないといけないことでも、今日だけは逃がしてくれよということもある。。。
この1行は初めてこの曲を聞いたときからシビれた。
なんて美しい言い回しだろうと。
ラスサビ前というタイミングも神がかっている。
And bur for the sky there are no fences facing.
『Mr. Tambourine Man』 – Bob Dylan
「そして空を除いては、邪魔をする柵を何もない。」
空も柵に入るんかい。
しかしただ「柵はない」と書くよりも、「柵はひとつだけあって、それが空である」というほうが何倍も自由に感じるところが、詩作の妙ですよね。
『The Times They Are A-Changin’』
Please get out of the new one if you can’t lend your hand
『The Times They Are A-Changin’』 - Bob Dylan
「新しい時代に手を貸せないなら、頼むからどいていてくれ」
いくら「時代は変わる」とディランが歌っても、この1行だけの変わらないと思う。
自分もそうなっていくんだろうなあ。
TikTokやってる高校生見てちょっと白い目しちゃうもん、すでに。マジで心が既にジジイ化してる気がしてマズイので、とにかく「興味を持とう」と言い聞かせて生きてます。
ともあれ、この1行に関しては変化が加速している昨今はより沁みますよね。。。
大企業に入って定年まで勤めあげるのが正規ルートと疑わない団塊とその下の世代。
企業が社会保障の一部を担うシステム自体が瓦解しかけていること、定年とかいう概念の危うさ、向こう数十年で業界ごとオワコンとなる例が多発すること、そして仕事というのは単にお金や社会的に地位の為だけにするものから、自由や何か生きがいのようなものを求めるするものに変質しつつあること。
これらを肌で感じ取っている今の20~30代。
この2つの世代の相克は今だに深い気がする。
この数年でだいぶ変化を否定しきれず受け入れ始めた上の世代が多い気がしますが、5-10年前とかはそれこそ地獄の親子喧嘩が起きていそう。
『Don’t Think Twice, It’s All Right』
I give her my heart but she wanted my soul.
『Don’t Think Twice, It’s All Right』 – Bob Dylan
「俺が彼女に心を捧げてても、彼女が欲しがったのは俺の魂だったんだ。」
でも、思い返すことはない。これでいいんだ。
いやー、これも鳥肌立ったなあ。
ディランの歌詞ってもちろん内容でシビれてるんですけど、言い回しもめちゃくちゃ綺麗。
あとそういうキラーフレーズが出てくるタイミングとメロディ。
想いやなんやがすれ違ったり届かなかったり、求めるものの色とか量とか形が違ったり。
この1行だけで、人間同士の関係の難しいシーンがたくさん浮かんできます。
『You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go』
You’re gonna have to leave me now, I know
『You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go』- Bob Dylan
But I’ll see you in the sky above
In the tall grass, in the ones I love
「君はいま僕をおいていく。わかってる。
でもきっと空の上でまた君と会うんだ。高く草が生えた場所で。僕が愛した人たちの中で。」
別れの歌です。
これ、訳す人にによって上の赤字のように、死んだ後にも君に会うくらい、別れても大切な人だという解釈になっています。(seeが「会う」という意味で、それに in the sky 空の上で がかかる)
しかし僕の当初の理解は違いました。
僕は see を「見る」と呼んで。in the sky で「空に」
要するに「高い草が茂る場所なんかで空を見上げた時には君のことを思い出す。」
みたいな感じだと思ってました。
で、in the ones I love というのは、君以外にも人生で出会う大切な人たち。
そういう人たちの中で、別れた君を思い出すという描写。
出会いと別れに満ちた人生で、そのどちらの結末になった関係も大事に抱え続けていくというような意味に捉えていました。
正直、歌詞の解釈に正解はないし、別に自分が感動する形で聴ければそれでいいんですが、
in the tall grass が西洋の死生観における天国的なイメージを想起させるのであれば前者の解釈の方が妥当かなあという気がしている。(知らないんだけれど。)
とりあげずこのフレーズの良さを堪能するには、小気味の良いリズムにのってやけに色気のあるトーンで歌うディランの声で聴くのがよろしい。
『Idiot Wind』
What’s good is bad, what’s bad is good
『Idiot Wind』- Bob Dylan
You’ll find out when you reach the top
You’re on the bottom
「善いものは悪い、悪いものは善い
お前はきっと気づくよ、頂上までのぼりつめてときにさ
いちばん底にいるんだってことに。」
善悪の逆転。
この世の中で上り詰めるには、一般に善いとされていることが悪手で、悪いとされていることが良い手でであることも多いのでしょう。
そんな現実主義なあなた、それもいいけれど、きっと後になって気付くってね。
どんなに偉くなっても、人間としては底まで落ちるってことに。
かっこいいいいいいいい。
You’ll never know the hurt I suffered
『Idiot Wind』- Bob Dylan
Nor the pain I rise above
And I’ll never know the same about you
Your holiness or your kind of love
And it makes me sorry
「君にわかることはない。僕を苦しめた傷も、僕が乗り越えた痛みも。
そして僕も君のそれらを知ることはないんだ。君の神聖さや君の愛の形も。
それがたまらなく残念だよ。」
この曲でいちばんのトリハダポイント(異論は認める。)
友達に教えてもらって気づいたこと。
ずっとこの曲では You を主語に「愚かな風」と歌われていますが、曲の後半のこのフレーズの後から主語が we になる。
「ディラン最後は優しい説」と友達は読んでいました(笑)
確かに。
本当にここの歌詞は一級品だ。
何より歌われて威力が10倍マシになるメロディですよ。
『Tangled Up in Blue』
I muttered something underneath my breath
『Tangled Up in Blue』- Bob Dylan
She studied the lines on my face
I must admit I felt uneasy
When she bent down to tie the laces of my shoe
Tangled up in blue
「僕は呼吸の下で何やら言って、彼女は僕の顔のしわを見つめていた。
正直言うと、ドギマギしたよ。彼女が僕の靴紐を結ぼうと前かがみになったときにはね。
ブルーに絡まった靴紐を。」
こっちがドキドキするわい。
どんなにドラマティックでロマンティックなシーンを描いても、どんなに誰もが共感できるような場面を歌っても、どうしてディランが切り取ったこのひとコマには適わないんだろう。
でも人生における詩的な記憶みたないものって、誰にでもあると思うけど
だいたいこういう類の一瞬ですよね。
このフレーズを聴くためにこの曲を再生するまである。
To be continued …
今後もシビれるたびに随時更新予定。