歌詞分析

【英詞和訳】ジミー・バフェット『He Went To Paris』を日本語に訳しました

今回はジミー・バフェット Jimmy Buffett.

アイランド・エスケービズムという思想をなす歌手としては最も有名な人らしい。(Wikipedia)

ベストセラー作家でもあり、レストランの経営者でもあるというなかなか強烈な人物。

僕は正直ジミー・バフェットについては詳しく知らないし、他の曲も数曲知っているものがあって、たまについでに聴くくらいのもの。

ではなんのついでに聴くのかといえばもちろん、
表題にある『He Went To Paris』を聴くついでである。

初めて聴いた時から惚れこみ、以降何度も繰り返し聴いているけれど
それでも聴くたびに染みわたる穏やかであり、同時に心を震わせる情感は筆舌を超えています…。

メロディーやギター歌声もさることながら
やはり一番好きなのは歌詞…

まるで主人公と共に一生を終えたような、
辛いこともあったけどふりかえればあれもこれも…

そんな穏やかな気持ちになる歌詞。

が、「He Went To Paris 和訳」で検索しても全然結果が出てこないのです。

そんなことがあっていいはずがない。
この歌詞の素晴らしさをこの日本というアイランドにも伝えねば!!

そう思った次第です。

英語は得意なはずですが、あまり歌詞の和訳はやったことがないので
こなれた感じにできるかわかりませんが、とりあえず内容さえ伝わっていただければ本望です。

ではご堪能あれ。

『He Went To Paris』 の歌詞和訳

He went to Paris
Looking for answers
To questions that bothered him so

He was impressive
Young and aggressive
Saving the world on his own

Jimmy Buffett – He Went To Paris

彼はパリへ行った
彼をずいぶん悩ませた疑問への答えを見つけるために

彼はすぐれた青年で
若く、意欲に満ちていた
ひとりで世界を救わんばかりだった

Warm summer breezes
and French wines and cheeses
Put his ambition at bay

Summers and winters
Scattered like splinters
And four or five years slipped away

Jimmy Buffett – He Went To Paris

暑い夏の風と
フランスのチーズやワインが
彼に日々を生きる大志を与えた

夏と冬は
破片のように散りゆき
4年、5年と時が流れていった

He went to England,
Played the piano
And married an actress named Kim

They had a fine life,
she was a good wife
And bore him young son named Jim

Jimmy Buffett – He Went To Paris

彼はイングランドへ渡り
ピアノ弾きとなり
キムという名の女優と結婚した

彼らはよい日々を過ごした
彼女は良き連れ合いで
彼にジムという名の息子を授けてくれた

And all of the answers,
And all of the questions
Locked in his attic one day

‘Cause he liked the quiet,
Clean country living
and twenty more years slipped away

Jimmy Buffett – He Went To Paris

あの答えのすべて
あの疑問のすべては
いつしか彼の屋根裏部屋にしまい込まれていた

彼は穏やかで
綺麗な土地での生活は気に入っていたから
そしてさらに20年の年月が流れていった

Well, the war took his baby,
Bombs killed his lady
And left him with only one eye

His body was battered,
His whole world was shattered
And all he could do was just cry

Jimmy Buffett – He Went To Paris

ああ、戦争が彼の息子を奪い
爆弾が妻の命を閉ざした
そして彼自身も片目を失った

彼の身体は打ちのめされ
世界のすべてが壊れてしまって
彼に出来たことはただ泣くことだけだった

While the tears were falling,
he was recalling
The answers he never found

So he hopped on a freighter,
skidded the ocean
And left England without a sound

Jimmy Buffett – He Went To Paris

涙が流れるなかで
彼は思い出していたのは
彼が見つけることのなかった答えだった

そして彼は貨物船に乗って
海を渡り
音もなくイングランドを去った

Now he lives in the islands
Fishes the pylons
And drinks his green label each day

Writing his memoirs
And losing his hearing
But he don’t care what most people say

Jimmy Buffett – He Went To Paris

今、彼は島に住んでいて
毎日、魚を釣り
グリーンラベルを飲む

思い出について書き記し
聴力は失われつつあるけれど
彼は他の人が言うことは気にしない

“Through eighty-six years
of perpetual motion,”
If he likes you he’ll smile, and he’ll say,

“Jimmy, some of it’s magic,
some of it’s tragic
But I had a good life all the way.”



And he went to Paris
Looking for answers to questions
That bothered him so

Jimmy Buffett – He Went To Paris

”86年間の
絶え間のない動きの中で、”
もし彼が君を気に入ったら語るだろう

”ジミー、あるときは魔法のようで
あるときは悲劇のようだった
だけど私にとっては、すべていい人生だったよ”

彼はパリに行った
彼をずいぶん悩ませた疑問への答えを見つけるために

おわりに

『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』-ポール・ゴーギャン

正確な歌詞を調べるのに複数のソースを参照しましたが、なかなか揺らぎがあり、どれが正規の歌詞かわかりませんでした…。

ただ細かい部分なので歌詞の解釈に大きな差異はないかと。結局自分の耳に聞こえた形で今回は表記しました。

ある男がパリへ行き、イングランドへ行き、大切な人と出会い、彼らと別れ…

そんなうねりに満ちた人生の中で
若いころに感じたどうしようもない疑問や
どこかにあると信じたかった答えなんかが
時に前面に出て人生の舵を切っては
いつのまにか胸の奥にしまい込まれて忘れられる

様々な経験を重ね
またその疑問や答えのことを考えると
彼の足はまた旅へと向かう

行きついた先はある島での穏やかな生活
何かを悟りただ今を静かに生きる男になった

ふりかえる人生は波乱だったが
魔法のように美しい瞬間も
悲劇のように痛ましい瞬間も
すべてそれでよかったのだ
良い人生で会ったのだ、と思える

たった4分足らずの曲なのに
ひとり気概に満ちて突き進んだ青年期から
家族を想い、支え合う素晴らしさに気が付いた壮年期へ
そして行き着く人生を悟る老年期。

時間的な動きに合わせて
物語の場所はパリ、イングランド、ある島と移動する。

時間的にも空間的にも
これほどダイナミックな展開が短時間で起きてるのに
驚く間もないほど自然に景色や人物や心情が瞼に浮かんでくる。

なんだか感覚的にも技術的にも圧倒され
感服するしかない名曲です・・・。

ところでこの曲が最後に島での隠居生活に行きつくのは
冒頭でも触れたアイランド・エスケービズムというジミー・バフェットの思想が織り込まれたものだと考えて良さそうです。

『He Went To Paris』を聴くと僕の中で同時に想起されるのは
ポスト印象派の画家であるポール・ゴーギャン

彼は株式仲介人として働くかたわら絵を描き始め
実際にパリにも行って画家として活動した。

かの有名はゴッホとの共同生活などを経て
後年ゴーギャンはタヒチに渡った。

現地の人々の生活を、人工的なものにまみれた西洋文明との対比の中で
「自然なもの」として美化し
それを『タヒチの女』『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』などのなかに捉えた。

さらにこのポール・ゴーギャンをモデルとして画家の主人公の数奇な人生を描くサマセット・モームの小説『月と六ペンス』

この小説でも突然絵画に目覚めた主人公ストリックランドはパリへ渡り
最終的にタヒチに移住する。

『He Went To Paris』の主人公は
僕の中でゴーギャンや、『月と六ペンス』のストリックランドと
部分的に重なり、共鳴するのです。

 

ある意味これらの人物も
先駆的なアイランド・エスケービズトだったの考えてもいいのかな…?

とにかく本当に大好きな曲です。
では。

ABOUT ME
ささ
25歳。 副業で家庭教師をやっているので教材代わりのまとめや、世界50か国以上旅をしてきて感じたこと・伝えるべきだと思ったこと、ただの持論(空論)、本や映画や音楽の感想記録、自作の詩や小説の公開など。 言葉は無力で強力であることを常に痛感し、それでも言葉を吐いて生きている。 ときどき記事を読んでTwitterから連絡をくれる方がいることをとても嬉しく思っています。何かあればお気軽に。