It is no use in Ving は定型表現として覚えておくといいフレーズ。
in が省略されて「It is no use Ving」となることもあります。
Don’t Think Twice, It’s All Right という曲はディランによくあるパターン通り、数行のブロックをひたすら繰り返すというパターン。
そしてその各ブロックの最初で使われているフレーズが
It is not use in Ving です。
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「Don’t Think Twice, It’s All Right」におけるIt is no use (in) Ving
It ain’t no use to sit and wonder why, babe.
「座って考えていても仕方ないよ、ベイビー」
It’s ain’t no use in turnin’ on your light, babe
「灯りを付けたってムダだよ、ベイビー」
It ain’t no use in callin’ out my name, gal
「僕の名前を呼んだってムダだよ、ギャル。」(ギャル・・・!?)
こんな感じで、各ブロックで繰り返されるフレーズで「It is no use in Ving」が使われてます。
ain’t は 「be + not」の俗的な言い回しです。
黒人の方の英語でより一般的と聞いたことがありますが、音楽をはじめとして特にアメリカではブラックカルチャーが人種の別の超えて広まり切っているので、フランクな英語ではどこでも聴くような気がします。
同じく、「ain’t no」で否定がふたつ重なっているのも俗的な言い回し。
英語のテストでやったらまあ✖になるでしょうね(笑)
no は前に否定語がある場合は any に代わり「not any」になるというのは学校英語の指導範囲ですから仕方ないですね。
(というかフォーマルな英語で正しく書けるように教えるべきだからテストでは全然✖にするべきだと思いますが。)
ちなみに否定がふたつ重なるダブルネガディブは、俗語だけでなく、ラテン語を母国語とする第2言語としての英語話者の間でもよく見られます。
スペイン語などではダブルネガディブにするのが正しい文法だから、それに引っ張られてしまうわけですね。
It is no use (in) Vingについての文法的な話
It is no use (in) Ving の文法的なポイントと余談をまとめておきます。
- in は省略されることがある。
- ちなみに同じ感じで in が省略されるものには以下のようなものがある。
・spend O (in) Ving
・difficulty (in) Ving
・busy (in) Ving - よく例示される諺↓
It’s no use crying over spilled milk.
「覆水盆に返らず」 - そもそも use に「役に立つ、益、効用」みたいないみがある。(useful 「役に立つ」とかね)
・be of great use
「とても有益だ・役に立つ」
・What is the use of studying?
「勉強して何になる?」
その他、歌詞の中の英語について
It don’t matter, anyhow
3単現のSはよく無視されますー。
The light I never knowed
know の過去形が knew ではなく knowed になっています。
次のフレーズの「the dark side of the road」と韻を踏むためでしょう。
これは珍しい(というかインフォーマルな)活用の変形ですが、learn の過去形に learned と learnt があるのもこういう緩い変形というか間違いが広まった結果なのでは?という気がします。
learnt が英語の出身地であるイギリスでより一般的で、learnedが英語の移住先であるアメリカでより一般的ということを踏まえると、やはり元は learnt だったと予想できますし。
Fare thee well
Fare wellは卒業式などの「贈る言葉」としての「farwell speech」や送別会「farewell party」などに残っているように別れること、要するに「さようなら」という意味です。
theeは古い英語の2人称。「そなた、汝」みたいな。
fare thee wellは全体で「さらば」といった感じだそうです。
曲では以下のように出てきます。
But goodbye’s too good a word, gal
So, I’ll just say fare thee well
「Goodbye は良い言葉すぎる
だからただフェアジーウェルと言うとしよう」
ということです。
これは
Goodbye の語源が
God be with you 「神があなたと共にあるように」
だということを踏まえると理解できます。
「『神のご加護を』なんてのは持ったない言葉だね、君。だから『さらば』とだけ言うさ。」
ってことですね。
You could have done better
仮定法過去完了です。
ということは「過去に起こらなかったこと」を仮定した話です。
「君はもっとよくできたはずだけど、しなかったよね。」です。
最後に曲を褒める
失恋後の男が歌っている曲という理解で問題ないでしょう。
詩から読めるに、これは男が女性から離れることを自ら選んだ形でしょうかね?
具体的に何が起きたのか、二人の間に何があったのかは全く歌われていません。
しかし以下のようなフレーズがあります。
You’re the reason I’m trav’lin’ on
「旅立つ理由は君なんだ」
つまり彼女から離れること自体が目的。
Still I wish there was somethin’ you would do or say to try and make me change my mind and stay
「まだどこかで君が何かを言うかするかするんじゃないかって期待してるよ、僕が考えなおして思いとどまるようにね。」
自ら離れることを選んでおいて未練がないわけではないようです。
You could have done better but I don’t mind
You just kinda wasted my precious time
「君にも良くないところはあったけど、気にしてないよ。
ただ僕の大切な時間をムダにしただけなんだ。」
なんかディランの詩は暗喩やひねった言い回しに溢れているようで時々突然このようなハッキリして物言いが出てくるのでドキっとします。
Blowin’ the Windでは「答えは風の中」なんて含みを持たせている人間がMasters of Warでは「お前が死ぬことを願う、そしてその死がすぐに訪れることを」なんて歌うから。怖い。
ここでも突然の元カノ攻撃。
なんかこのようなフレーズたちを見ていると、、、
この男は完全にまだこの女性のことが好きですよね。
自分を引き留める彼女に 対して
Don’t think twice, it’s all rihgt「くよくよするな」「振り返るな、これでいいんだから」と歌うという体裁をとってはいますが
実際には自分自身がした決断に対しての言葉なんだと思います。
ちなみに僕がこの曲で毎回シビレ切らすキラーフレーズはこちら。
I give her my heart but she wanted my soul
「僕は彼女に愛を捧げるのだが、彼女が欲しがったのは僕の魂だったんだ。」
うーん。好きすぎる。。。
これ、giveが現在形なのが地味にポイントかもしれません。
現在形は習慣的なものや普遍的なものに使われるので、ここで現在形が使われるということは、男はこれまでも、そしてこれからも彼女を愛しているということです。
そしてその愛を与えるだけの覚悟があります。
だが、魂はその限りではないということです。
「夢を追う男と、夢を諦めてほしい彼女」みたいな話を想像するとわかりやすいような。
愛は女性に捧げても、自分の人生を生きる魂までは譲れない、みたいな。
個人的にはあまりマッチョな感じの男というよりは、男は男で苦しい決断をして、詫しくも吹っ切れたような、渇いた微笑で歌っているのを想像したいですね。
そう考えるとより沁みます。
僕の好みにぶっ刺さります。
you just kinda wasted my precious timeのトゲは似合わない感じになっちゃうけどね。
ではでは。
インテリアとしても熱いディランの詩集↓