ディランde英文法

【ディランde英文法】仮定法の条件 if it were not for 【It Not for You】

仮定法などというと小難しく聞こえます。

「えー仮定法なんて高校英語の範囲じゃん。中学英語で英会話は十分って聞いたけど?」

ふむふむ。

さてはトランプ前大統領のスピーチなどを引き合いにほらね、中学英語しか使ってない」などと言い張る英語を出しにした小金稼ぎさん太郎の意見でも聞きましたね?

しかし、この発言は2つの意味で間違っている。

①2021年度から仮定法は中学でも取り扱うようになりました、はい残念でした。
(文科省がPDFで公開している、55ページです。ほんとギリギリ入るって感じですね。中学英語のラスボス。リンク先でうまく表示されなかったらブラウザでページを更新すると出ます。)

②仮定法が高校の範囲だったとしても中学英語では英会話は不十分です。語学習得に近道はないので甘言に惑わされぬよう。

いや、めちゃ感じ悪い書き出し!笑

ともかくどんなに砕けた会話だろうがなんだろうが、仮定法は必須なのです!

だって仮定法がなかったら「もしものはなし」ができないんですよ!?

『ら、のはなしができないんですよ!!?

What if なんて仮定法 of 仮定法じゃないか。

ということで、愛を伝えるのには仮定法なのだと言わんばかりの、

ほぼ全編仮定法で書かれたディラン必殺の1曲。

『If Not for You』に登場していただきましょう。

Contents

「It Not for You」における仮定法の条件 if it were not for

全編通してこの表現で溢れた曲なので、とりあえず 1st verse を。

If not for you
Babe, I couldn’t find the door
Couldn’t even see the floor
I’d be sad and blue
If not for you

実のところ仮定法と if には言うほど関係がありません

仮定法を仮定法たらしめるのは助動詞の過去形です。

実際の英語を実用してみると、仮定法の条件なんてものは明示されないことがほとんどです。

だからここで注目すべきは couldn’t, Couldn’t, I’d (I would) というそれぞれの結論文にある助動詞の過去形です。

これだけで仮定法過去、つまり「ありうべからざる今」の話をしていることがわかるわけです。
(リゼロ?2期も絶望でしたね。レムがノンレム睡眠に入っていましたが。)

で、今回は条件が明記されていますね。

それがタイトルでもある if not for you 「君がいなかったら」ですね。

これは完全な形で書けば if it were not for you です。

英語ではこのような接続詞による副詞節のなかのSVが以下のパターンのときは省略されることがよくあります。

①副詞節のなかのSVが、it + be である。
②副詞節のなかのSVが、主節と同じS + be である。

今回は it were なので①のパターンですね。

同じような省略については下記の『It Ain’t Me Babe』でWhether節を説明した記事でも触れています。

仮定法の条件 if it were not for についての文法的な話

仮定法の条件 if it were not for の文法的なポイントと余談をまとめておきます。

  • 仮定法の条件「~なしで」を示す if it were not for ~


  • if it were not for ~ は実際には起こっていない現在を仮定する「仮定法過去


  • 実際には起こらなかった過去を仮定する「仮定法過去完了」では
    if it had been not for ~ になる。(大過去を使ってる。)


  • Without ~ / But for ~ のいずれかに書き換えられる。


  • If を省略する倒置の形になると Were it not for ~
    (猪口才な・・・。国立大学の入試でも長文内にこのような表現を混ぜこんで問いに絡めているものがありました。

仮定法はまず理解するまでが結構難しい上に、入試やその他試験の英語だと理解してる人でも間違えを誘われるようなギミックを入れやすいんですよね。。。

ちなみに英語の法(mood)には

・直説法(indicative mood)
・仮定法(subjunctive mood)

の2種類がありますがそれぞれ別名があり

・直説法 = 叙実法
仮定法 = 叙想法

といいます。


かたや現実を叙述し、かたや妄想を叙述する。。。

要するに仮定法というのは小難しく聞こえますが、感情的なものであったり、不確定なものであったり、そういうものに使われるわけです。

自分でも自分のことがわからない不確定要素に塗れ、感情に溺れている我々人間同士が、互いにコミュニケーションを図るのですよ?

仮定法なしで喋ってられるはずがないじゃないか。

If not for subjunctive mood, we couldn’t communicate with each other.

なのです。
(仮定法は実際には存在するから「仮定法がなければ」っていうのは妄想、つまり仮定法で書くべき文ってことです。ややこしいですね。)

その他、歌詞の中の英語について

wait for the mornin’ light to come in through

wait for で「~を待つ」です。

後ろに to V をつけて「~がVするのを待つ」にできます。

wait for という句動詞的な表現であると同時に、to Vの意味上の主語を示す for としての機能も果たしている。

地味に珍しい形な気がします。

Without your love I’d be nowhere at all.

「君の愛がなかったら僕は消えてしまうだろうさ」みたいな。

これも結論に would がある(省略されていますが)ので仮定法です。

条件は without your love。

if it were not とセットで教えるヤツですね。あるあるだ。

最後に曲を褒める

「You」への愛情をストレートに歌った曲です。

自然現象をたくさん描いて、「君がいなかったら」どうなってしまうのが、壮大に表現しています。

正直ディランの詩のなかではそれほど特筆すべきものではない気がします。

ただめちゃくちゃ愛されてますよね、この曲。。。。

ディランと言えば詩の力が先行しているように思われがちですが

大して凝ったこともせず、ベーシックな楽器編成とコード進行でこれだけの名曲をバカスカ残しまくっているわけで。

メロディーライターとしても、やはりとてつもないアーティストなのだと実感します。

というか、こちらのRolling Stone誌の「史上最高のソングライターTOP100」なるランキングでディランが1位に輝いていた(笑)

凄すぎないか。

ジョンとポールより上なんですね。

ポール・マッカートニーが1位だと思った。(日本人になじみやすいっていうのもある?)

メロディーだとポール(マッカートニーの方と、サイモンの方。)がイメージ強いんですよね。

本当になんとなくだけど。

ディランの曲は彼らの曲と比べて、聴きこんで良さにだんだん沼ってくる感じがしてます。

各方面から愛される『If Not for You』ですが、以下に2つの展開を紹介しておきます。

インド大好きハレークリシュナ状態のジョージ・ハリスンのバージョン↓

絵本にもなってます。ワンちゃんたちの絵が優しい。

では、このへんで。

触らない日はないディランの詩集↓

ABOUT ME
ささ
25歳。 副業で家庭教師をやっているので教材代わりのまとめや、世界50か国以上旅をしてきて感じたこと・伝えるべきだと思ったこと、ただの持論(空論)、本や映画や音楽の感想記録、自作の詩や小説の公開など。 言葉は無力で強力であることを常に痛感し、それでも言葉を吐いて生きている。 ときどき記事を読んでTwitterから連絡をくれる方がいることをとても嬉しく思っています。何かあればお気軽に。