Contents
文法は敵ではなく味方
学校の授業で従来の文法解説のコマを減らし実践的な英会話などのオーラルコミュニケーションを増やそうという動きが活発です。
実際に生徒が学校で英語を使う機会が増えるのはとても良いことですよね。
しかし何故かオーラルコミュニケーションの重要性を説くために英文法を槍玉にあげるような意見をたびたび耳にします。
たとえば、、、
- 「ネイティブは文法なんて考えて喋ってないでしょ」
- 「難しい文法用語ばかり使っていたら英語が嫌いになる」
- 「テストには必要だけど英会話には必要ない」
- 「間違っていても伝わればいい、言葉は心だ」
- 「文法ばかり教えるからいつまでたっても英語ができない」
とか。
ぐぬぬ。
正直いうとこういう意見をすべて論破するのは難しいのですが・・・。 それでも僕は英文法はしっかりと学ぶべきだと思います。
ですから今日は、話を「大人」に絞って何故大人こそ文法を勉強するべきか書きたいと思います。
私は生まれてこのかた24年間、海外を長期間旅行したことは何度かありますが、英語圏に(それどころか海外に)住んだことはありません。
しかし今は英語を流ちょうに話します。
外国人の友人とのコミュニケーションで困ることはほぼありません。
何の勉強もせず(出題形式や時間すら知らず!)受けたTOEICで900点を取りました。
英語で仕事ができるレベルだと思います。
そして 断言しますが 私がここまで来られたのは 間違いなく
英文法を妥協せず学んだから です。
他にも文法をしっかり押さえるべき理由・利点はいろいろとあるので説明していきます。
英文法は味方につければとても頼りになるのです。もちろん発音や単語はどうでもいいと言っているわけではないですよ。
それでは、本題に入ります。
大人こそ文法から学ぶべき5つの理由
理由その① 抽象化の能力が高いから
理由その② 他の言語や物事に取り組むときにも役立つから
理由その③ 「何故」がわかるから
理由その④ 大人だから
理由その⑤ 結局本質的な英語学習だから
本当はもっとあるでしょうがとりあえず今回は5つ取り上げることにしました。順番に説明していきます。英語を勉強して、英語しかできるようにならないなんて勿体ないですよ。
理由その① 抽象化の能力があるから
そもそも抽象化って?
抽象化とは、物事の注目すべき側面だけを抜きだして捉えることです。例えば、
サッカー 野球 相撲 → スポーツ
パスタ レタス ぜんざい → 食べ物
エジプト ポーランド 中国 → 国
みたいな感じです。さらに、
ボクシング ブラジリアン柔術 相撲 → 格闘技
パスタ ティラミス ピッツァ → イタリア料理
エジプト ウズベキスタン チュニジア → 僕の行きたい国
のように、さらに細かく抽象化するこもできますよね。また、
ボクシング ティラミス チュニジア → カタカナ5文字の言葉
のように異なる要素に注目して抽象化しても良いですよね。
文法というものはまさにこのような多元的かつ多重構造を持った理解のために枠組みです。
一般的に語学習得については子どものほうが優れていると考えられますが、抽象化の能力に関しては間違いなく大人のほうが何枚も上手ですよね。
これを使わない手はありません。
文法はパズルゲーム
英語の話に入る前に、みなさん、ちょっとジグソーパズルを思い浮かべてみてください。
ジグソーパズルで遊んだことがある人はわかると思いますが、バラバラのピースを袋から出したら真っ先にすることは何だったでしょうか。そしてどのようにパズルを進めていくでしょうか。
きっとほとんどの人がピースの仕分けをすると思います。「一辺が平らなピース」と「そうではないピース」に分けるんですね。そこから「2辺が平らな4つのピース」を見つけて角を埋める。そして少しずつ全体の外枠となるように「1辺平らピース」たちはめていく。たぶんそのあとは全体の完成図をみたうえで、残りのピースを「色や柄」ごとの山に分けていく人が多いのではないでしょうか。「青っぽいピース」とか「白っぽいピース」とか。「線がたくさん入っているピース」とか、「真っさらなピース」とか。そしてパズルもいよいよ完成が近くなると、同じ色や柄の中でも「形」で分けていきますよね。「3つ手が生えてるピース」とか、「2つスペード型があるピース」とか。
きっとこのように仕分けしながら取り組むのが最速だからそうするんですよね。少なくとも仕分けをしないピースの山の中からあたりを見つけるまで探すよりは絶対に早い。
これは英語でも全く一緒です。抽象的に考えれば、ピースの仕分けは「抽象化」の作業ですよね(わざわざややこしい言い方をしてすみません)。
文法体系というのは、人類が今まで発したり書き残したりしてきた言葉やフレーズ・文章などを、あらゆる度合いと角度から抽象化を重ねまくって作られた抽象による化け物です。
こいつを敵に回すと頭がごちゃごちゃになるだけかも知れませんが、時間をかけて向き合ってしっかり理解して乗りこなせば、どんな英文でも理解できるようになります。
つまり、文法をを軽視して英語を学ぶということは、ピースの仕分けをないがしろにしてジグソーパズルを完成させようとするようなものだ、ということです。
もちろんピースの仕分けだけをしていてもパズルが完成しないように、文法だけ完全に理解しても英語ができるようにはなりませんから、どの程度深くまで学習していくべきかについても、追々このブログ内で書いていきたいと思います。
実際に英語に当てはめると・・・
I have a ○○.
という文章があったら、文法的に言えば(抽象化して捉えれば)
「○○にはa,e,i,o,uの音で始まらない可算一般名詞の単数形が入る。」ということができます。
え、難しい・・・。と思う方もいるかも知れませんが、この一行で○○に入るすべてのパターンを押えているというのは驚くべき偉業です。極論ですが、抽象化を一切しないで説明すると、
aboutは入らない。 bananaは入る。 childrenは入らない。 doは入らない。 easyは入らない。 Finlandは入らない。 goingは入らない。 hatは入る。 inは入らない。 jokeは入る。 Kentaは入らない。 laughは入らない。 mainlyは入らない。 neither入らない。 octopusは入らない。peacefulは入らない・・・・
と延々と思いつく単語を精査していく羽目になるわけです。これを少し抽象化して(品詞で括って)、
- 名詞:banana children Finland hat joke Kenta octopus
- 前置詞:about in
- 動詞:do going laugh
- 形容詞:easy peaceful
- 副詞:mainly neither
※複数の品詞として働ける単語ももちろんありますがここでは簡略化
と捉えるだけでもかなりわかりやすくなりますよね。
I have a ○○. に関しては、文法を学ぶことで、
aboutは入らない。 bananaは入る。 childrenは入らない。 doは入らない。 easyは入らない。 Finlandは入らない。 goingは入らない。 hatは入る。 inは入らない。 jokeは入る。 Kentaは入らない。 laughは入らない。 mainlyは入らない。 neither入らない。 octopusは入らない。peacefulは入らない。・・・・etc.
↑↑これが・・・
○○にはa,e,i,o,uの音で始まらない可算一般名詞の単数形が入る。
↑↑こうなりました。
つまり見てわかるように
文法を学べば学ぶほど、暗記の量が絶対的に減ります。
それはバラバラに覚える個別の知識よりも、体系的に覚える一般原則のほうが汎用性が圧倒的に高いからです。
暗記とは反復により為せる技です。そして無心に同じことを反復するのは子どもの得意分野であれど、大人には辛いものです。(僕は子どものころ、父親を付き合わせてビッグサンダーマウンテンに1日で5回乗ったことがあります。父親はうんざりというか、辛そうでした。優しい父親です、ほんと。)
そう考えると文法を学ぶということはまさしく、大人の得意分野(抽象的に物事を捉える)で苦手分野(暗記・反復)を出来るだけカバーするということに他なりません。
以上が 大人こそ文法から学ぶべき5つの理由 その① でした。 その②へ続きます。