付帯状況のWithは、注意して読まないと慣れないうちは見つけるのが難しいです。
ただ、形容詞の規則や、SVOCの読み方、分詞構文などについて一般的な知識がついてくるととても簡単に理解できます。
英文法の習熟レベルをはかる試金石になる表現かも知れません。
Simple twist of grammar といったところか。。。
ということでディランの『Simple Twist of Fate』の一節を使って勉強していくぜ。
Contents
「Simple Twist of Fate」における付帯状況のWith
A little confused, I remember well
And stopped into a strange hotel with a neon burnin’ bright
「ちょっと混乱してたけど、よく覚えてる
ネオンやたら光ってる変なホテルに入ったんだ。」
Simple twist of fate 「ただの運命のねじれ」
(『運命のひとひねり』という邦題が知られている。)
この表現で締めくくられるVerseが6つ続いて終わりの曲です。
名盤と名高い『Blood on the Tracks』(『血の轍』)からの1曲ですが
『Tangled Up in Blue』『Shelter from the Storm』など同じ構成の名曲で溢れていますな。大満足。
Simple twist of fate はある男性(=語り手)と女性の一夜の交わりを暗喩しています。
その simple twist of fate の発生現場である hotel の描写で出てくるのが
付帯状況の with です。
hotel with a neon で 「ネオンがついたホテル」ですがこのあとに burning という現在分詞がついて
hotel with a neon burning となっている。
これが付帯状況の with です。
もっと一般的に言えば、with + 名詞 のあとに be動詞の後ろにきそうなものがきていて、そいつに他のなんの役割もないとき、それは付帯状況の with の表現です。
be動詞の後にきそうなものというのは
- Ving
- Vp.p.
- 前置詞+名詞
- 形容詞
- 副詞
あたりのことです。こいつらを便宜上「X」とすると
付帯状況 with の後ろの「O→X」の間には「主語→述語」の関係があります。
(第5文型SVOCの「O→C」の関係と全く同じです。)
Simple twist of fate に話を戻すと
hotel with a neon burning の
「a neon (O) → burning (X)」が「主語→述語」の関係です。
要するに a neon is burning brightという文が隠れていると思えばOK。
「ネオンが明るく輝いている」
この状況が with によって主節全体や近くの名詞に付帯されるわけです。
よって今回は hotel にかかって
「ネオンが明るく輝く変なホテルに入った。」
付帯状況のWithについての文法的な話
付帯状況のWithの文法的なポイントと余談をまとめておきます。
- SVOCになぞらえて With O C と理解するとよい。
- Cにはいるのは・・・
・Ving
・Vp.p.
・前置詞+O
・形容詞
・副詞 など。 - 文修飾と名詞修飾の両方のパターンがある。
・With the lights out, it’s less dangerous.
「明かりが消えると、そのほうが安全だ。」(文修飾)
(Nirvana『Smells like Teen Spirit』より)
・a strange hotel with a neon burnin’ bright
「ネオンがぎらつく変なホテル」(名詞修飾)
(Bob Dylan『Simple Twist of Fate』)
こちら(↓)の記事の 3.7 のスライドでいろいろ説明していますー。例文もありますー。
その他、歌詞の中の英語について
‘Twas
It was の短縮形。
『Shelter from the Storm』の歌いだしも「’Twas another life time ~♪」
wished that he’d gone straight
仮定法過去完了。
wishしたのが過去なので、過去の「もしも」の話はさらにひとつ過去に時制をズラして大過去になる。
he had gone ね。
He told himself he didn’t care
再帰代名詞を使った表現は日本語の「自分自身に~」という表現よりも多く見られる。
「独学した」は taught myself と言いますね。
an emptiness inside to which he just could not relate
to whichが形容詞節を作って emptiness を修飾。
to と relate がもともとは relate to 「関連がある」という形であることに気付けるか。
大学入試とかだとわざと間に長い副詞句とかが挟まっている文を取り上げてもとの形が見えにくくしてあったりしますから、こういう単語同士の共起性は知っておきたいところです。
最後に曲を褒める
ワン・ナイト・ラヴ・アフェアもディランがタクトを振ればここまで哀愁漂いますか・・・!
ちょっと人称代名詞に注目してみます。
They sat together in the park
As the evening sky grew dark
She looked at him and he felt a spark tingle to his bones
運命にひとひねりされたふたりは they で表現され
各々は he と she です。これは 1st verse。
それが 2nd verse になると I が出てきます。
They walked along by the old canal
A little confused, I remember well
I についている動詞は remember
これは語り手の記憶についての歌であることがわかります。
そしてこの後 I はもう最終verseまで出てきません。
じゃ、最終verseを見てみましょう。
People tell me it’s a sin
To know and feel too much within
I still believe she was my twin, but I lost the ring
She was born in spring, but I I was born too late
Blame it on a simple twist of fate
「あんまり知ったり感じたりしすぎるのは罪だと皆は言うが
僕はまだ彼女が僕の双子だったと信じてるんだ。だけど指輪を失くしてしまった。
彼女は春に産まれたが、俺が産まれたのは遅すぎた。
それも運命のひとひねりのせいなんだ。」
切な・・・!
一夜を共にしただけの女性にこの想い。
一方でその彼女はと言うと
She dropped a coin into the cup of a blind man at the gate
And forgot about a simple twist of fate
忘れることにしたようです。これはドンマイだ。
なんにせよ
最後のverseで現在形の表現ともに
「I」「me」という一人称に一気に表現が引き寄せられていきます。
どこか他人ごとを語るように3人称で続いてきた話。
序盤で一瞬だけ洩れた現在の自分の視点(I remember well)。
そして話が進んで最後になって
他人事として距離をとって語っていた記憶が、現在の自分の心境と混ざり合ってゆく・・・。
やはり美しい曲だ・・・。
他にも
「夜の熱気が貨車のように彼を打った」
「門にたたずむ盲目の男」
「窓を大きく開いて空っぽを感じる」
いちいち描写がおしゃれで情景が目に浮かびます。
同じアルバムの直前の曲『Tangled Up in Blue』から続けていくのがやっぱり良い!
ただのラブソングではない男女の関わりの深読みしまくりましょう。
では、このへんで。
君の運命にひとひねりを加えるかもしれないディランの詩集↓