ディランde英文法

【ディランde英文法】接続詞のfor【The Times They Are A-Changin’】

前置詞としてお馴染みの「for」という単語には接続詞の用法があります。

接続詞のforは文語的な表現なので、会話で使うと大げさな感じがするらしいですが、詩のなかに入れると「醸しだし力」が強そうな表現。

日本で言うところの「~~なのだから。」みたいな感じでしょう。

こちらの表現が多用されるディランの名曲は
「The Times They Are A-Changin’」

Contents

「The Times They Are A-Changin’」における接続詞 for

ディランは詩が強いアーティストなので、ディランの言いたいことをいうために数行のフォーマット化したフレーズをひたすら繰り返すという曲が多いです。

で、言いたいこと言い終わったら曲がストンと終わってしまうという。

非常に好感が持てます、僕はね。とても好感が持てます!
伝えることがあるから歌っているという感じ!

で、この曲もやはり同じフレーズが繰り返される感じ。

ブロックごとに様々なテーマでディランが数行歌い、どのブロックでも最後の行で「時代は変わっていくのだから。」といって終わります。

このキーフレーズにいろいろなディランの主張が収斂していくのです。

このキーフレーズがタイトルの
「The Time They Are A-Changin’」=「時代は変わる」。

しかし曲の中では頭に接続詞のforがついて

For the times they are a-changin’

と歌われます。つまり

「時代は変わっていくのだから

ここが for です。

接続詞の for は「理由」を表しますが、前ですでに述べられている内容に後から理由を付け足すという用法しかありません。

(Becauseみたいに文中のどこにあってもいいわけではない。)

つまりこの曲では、ブロックごとにディランが言いたいことをいって、最後のその主張の理由として「だって時代は変わっていくんだよ」と付け足しているのです。

英語でも日本語でも、なんなら映画の筋書きだろうが、人間が何かを表現するときには、強調したいものを最後の方に持ってくるという傾向があります。

だから for のようなあえて後ろに理由を持ってくるのに特化した表現は、ちょっと大げさというか、文語的な仰々しさがあるのかもしれません。

ただこの曲では、「時代は変わっていく」というのがまさしくディランの強調したい部分なので、こういう書き方になるのは自然ですね。

接続詞 for についての文法的な話

接続詞 for の文法的なポイントと余談をまとめておきます。

  • 前置詞のforにも「理由」の用法があるので絡めて覚えるとGOOD
  • 文語的な表現なので、基本的に口語では使わない。
    (「~なのだから」と同じですね。アニメキャラとかは言うけど。)
  • 接続詞 for は接続詞 so の反対だと覚えると良い。
    因果関係としては、
    「SV(因), so SV(果)」
    「SV(果), for SV(因)」
    となる。
  • 接続詞 so と反対関係にあるので、接続詞 for は等位接続詞と考えるべき。
    (意味が同じということで、従属接続詞の because と混同して、後ろの節の理由を書くのに for を使うという間違いを避けるため。)

等位接続詞って、and, but, or が王様だからどうしても文法的に同じものどうしなら何でもつなげるように思えますが、so とか for のように文と文を繋ぐ以外の使い方がまずされない等位接続詞もあるんですよね。。。

Oxford Leaner’s Dictionariesでは文と文を繋ぐ以外の用法は見つからなかった。)

接続詞一般については下記の記事にもあります。

その他、歌詞の中の英語について

worth Ving

If your time to you worth savin’

形容詞 worth は形容詞のくせに後ろに目的語をとります。(前置詞と分類したい人もいる。)

置けるのは名詞かVing。

上の例はVingの「Savin’」が置かれていますね。

「もし君にとって君の時間が守る価値のあるものなら」なので

「人生の時間を無駄にしたくないなら」という感じでしょうか。

ちなみにworthの後ろに来るVingが他動詞のときは、その目的語は書かれません。で、目的語と文の主語一致する循環構文になります。

このフレーズだと、savingの意味上の目的語は、文の主語である your time です。

A-Changin’

ディランの曲ではたびたび見かけますが、このVingの前に「a-」がつくやつってなんなんでしょうか?

まあ、「in’」は「ing」の略式なんだと思いますが、「a-」って・・・。

「ain’t」みたいな地域性、人種性、社会性、などに基づくDialectの一種とか?

今度調べてみようかしらん。

Times

timeは時間という意味ですが、基本的には不可算名詞なので複数形になりません。

が、timesという英語がないかと言われれば、まあ、普通にあります。

まず I’ve visited Spain three times. 「スペインに3回行きました。」とかでお馴染みの「回数」という意味の time は複数形です。

1回のときは one time ではなく once なので「回数」を意味するときの times は複数形ですね。

あとは今回のように「時代」を表す場合も times

チャップリンの名作映画も「Modern Times」
工業制資本主義に根差した「現代」という時代の風刺です。

マルクスのいう労働の疎外化という概念が、マルクスの時代から数十年でここまで現れてくるとは、、、という感じですね。(解決策は共産主義ではなかったようですが。余談。)

The Times = They の同格関係

「The Time They Are A-Changin’」

タイトルになっているフレーズですが、なんだか主語が2つあって、文法からしっかり勉強している人ほど「ん?」ってなりそう。

これは The Timesと先に強調する単語を示しておいて、それを they という代名詞を受け直して文を書いています。

日本語で言うなら
「時代、それは移ろいでいくものだ。」

と渋めに言っている感じ。

be to V構文(be to 不定詞)

For the loser now will be later to win.

「現在の敗者はあとになって勝者となるだろうから。」

ですね。

be to winの構造の間に副詞の later が割り込んでいます。

be to V構文にはいろいろ意味がありますが、ここでは「運命」的なニュアンスで読むと熱いです。

be to Vについて詳しくは下記の記事で。
(英文法スライドPART3の「3.2_To Vの3用法+@」)に詳しい。)

最後に曲を褒める

ディランの初期の名曲。

弾き語りやすいのでよく歌います。

歌詞の内容にとどまらず韻踏みも気持ちよい。

個人的には4ブロック目の、世の中のオトナに語りかける部分が特に好き。

そこまでは政治の話や人の世の話など、大きなテーマでした。

しかし後半になって、子どもはオトナの前時代の価値観を捨てて現在に適応していくのだから、と。

それを応援できないのならば、邪魔だてをせずに道を譲れ、と。

誰もが身に覚えのあるミクロへ話が展開する。
そして自分もいつしかそういう時代についていけないオトナなるかもしれないと身をつまされる。

80歳になろうとするディラン自身は、自分が20代のときに歌ったこの曲をどう聴くのでしょうか。

僕はまだ20代半ばだが、ずっとこの曲を今と同じ様に聴いてきくのでしょうか。それとも何かが変わっていくのでしょうか。

まあ、時代が変わっていくことだけは確実です。
でも流行りものに飛びつき続けるのが時代についていくということではないから難しい。

名曲とともに人生を考えてみます。

僕が持っているディランの詩集↓
部屋にあるだけでテンションが上がります。

ABOUT ME
ささ
25歳。 副業で家庭教師をやっているので教材代わりのまとめや、世界50か国以上旅をしてきて感じたこと・伝えるべきだと思ったこと、ただの持論(空論)、本や映画や音楽の感想記録、自作の詩や小説の公開など。 言葉は無力で強力であることを常に痛感し、それでも言葉を吐いて生きている。 ときどき記事を読んでTwitterから連絡をくれる方がいることをとても嬉しく思っています。何かあればお気軽に。